
朝の出勤
満員の朝の地下鉄に乗り込む。
以前はスーツを着て、皮のビジネスバッグを手に持って、この同じ時間の電車に乗り込んでいた。 すでに15年も前のことである。
ぎゅうぎゅうの車内が懐かしく思える。
当時私はサラリーマンでも、契約社員という位置づけで、社内でも割と自由に振る舞えるスタンスにいた。
業績さえ問題なければ、休みを取ろうが早退しようがお構いなしで、バブル崩壊後に会社から虐げられ始めていた社員達からは、冷やかし半分で羨ましがられていた。
それもそうだろう。 急に世の中の常識が変わり始めて、学歴や年功序列が重要視されていた日本社会の常識が揺らぎ始めていた時期だった。
訳も分からず勉強を強要され、訳も分からず大学に進学し、訳の分からない会社に就職してしまい、突然、昨日までの常識は夢物語でした。・・・と宣告され、長い眠りから揺さぶり起こされてしまったのだ。
すぐに飛び起きられた人間もいたかもしれないが、大半は夢うつつ。
寝ぼけた状態のままに今日まで来てしまっていた。
まさに、日本中が夢遊病者だらけ。
そんな夢遊病者たちに向けて、企業は容赦なく残酷な仕打ちをしたものだった。
ボーナスが無いなんて当然だろう。
人件費削減のために将来を有望視されていた中間管理職に対し、依願退職者を募って、今やめてくれれば退職金を何百万払います。・・みたいなことを平然と打ち出したのだ